「マニラ日本人学校の1年2組での取り組み」倉敷市立中洲小学校                                教諭 岡田 浩之
 
1.小学部1年2組とは・・・
 MJSは小中併設校であり,児童生徒数は500人を超える。その内の約20パーセントは,MH(Mixed Heritage)児が占める。彼らの家庭は父親が日本人,母親がフィリピン人の場合が多く,家庭で父親より母親と過ごす時間が長く,タガログ語や英語を使うことが多いため,家庭で日本語に接する時間が他の児童に比べかなり少ない。そのため,日本語の語彙数が不足し,普通学級で適応していけない場合が起こってくる。そこで,小学部1年2組が存在し,2年生までに普通学級で過ごすために必要な日本語力を身に付けるとともに,学習指導要領に則ったカリキュラムを行っているのである。
2.指導の実際
 入学式の前夜,寝言でタガログ語と英語で話していたらしい。準備は完璧を期していたものの,初めて1年2組を担任するという不安は心に大きく圧し掛かっていたようである。
(1)児童の実態
   就学時検査時に,英語で受検した児童3名とタガログ語で受検した児童1名の計4  名でスタートした。日常会話は殆ど英語かタガログ語で,自分の名前は平仮名で書くことができた。(2学期は1−3から1名編入,3学期は1−1から1名編入)
(2)日本語力を身に付けるために
  @話す力を育てるために
  話す前に聞く耳を育てるために,視聴覚教材を活用したり読み聞かせを行ったりした。また,系統的な日本語指導をするために,副読本「にほんごだいすき」を使い,児童の実態に合わせ内容の順序を入れ替えたり追加したりして,副読本を改定した。
A書く力を育てるために
 書く活動を習慣化させるために,帰りの会の後,作文を書かせることにした。自分の経験を残すだけではなく,自分の成長の跡に気付くことを目的にした。7月は30字程度だったが,10月には100字程度を5分間で書くことができるようになってきた。また,「書きたい、伝えたい。」の意欲を喚起させるために,日本にいる祖父母にMJSのこと(学校,友達,先生等の様子)を伝える手紙を書くという活動を取り入れた。
B保護者との連携
 学校で学習したことも家庭の協力なくしては実を結びにくい。父親は仕事が忙しく十分に子供たちに関わり難いので,日本語が苦手な母親にスポットを当てた。毎日子供たちの成長を伝える学級通信を平仮名で出し,一緒に勉強するよう協力をお願いした。また,面談や電話連絡,連絡帳(途中から交換日記のようになった。)も活用した。
Cその他の取り組み
 年度当初から生活科、音楽,図工,体育については他のクラスとT.T体制で指導を行った。2学期からは他クラスから日本語が苦手で一斉指導が難しい児童を編入させたり,日本語力が伸びた児童を他クラスで学習させたりして,交流を図った。
3.終わりに
 「1年2組の子供たちに日本語を教えるんだ。」と息巻いて指導を始めたが,教えてもらったのは私の方だった気がする。一人一人の実態を見つめ個人の課題を設定する大切さ,正しい日本語を使うことの難しさ,真剣に学ぼうとする素晴らしさ,今まで当たり前のように考えてきたことの真の重要性を再認識させてもらった,私にとって「宝」になる1年間だった。